着床前診断 PGDとPGS
PGD(着床前診断)とは
体外受精してできた胚を検査し、染色体が正常な胚だけを子宮内に移植することで流産を防ぐ治療法を、着床前診断(PGD:Preimplantation Genetic Diagnosis)といいます。
当院では、ご夫婦どちらかの染色体構造異常または遺伝子疾患が原因での習慣流産(不育症)に対し、日本産科婦人科学会の倫理委員会で承認を得た症例に限り着床前診断(PGD:Preimplantation Genetic Diagnosis)を行っています。
流産は大変辛い経験であり、ようやく妊娠されたご夫婦にとって天国から地獄につきおとされるようなお気持ちになるものと思います。
そのような辛い経験をされるご夫婦が1組でも少なくなるように、当院ではPGDに取り組んでおります。
PGDを受けるには
日本産科婦人科学会よりPGDの実施を容認してもらうためには、まず、習慣流産の原因がご夫婦どちらかの染色体構造異常であることが確定されなければなりません。
その後、以下のような流れを経てPGDを受けることができます。
- 「PGDが必要」と担当医が判断
- 日本人類遺伝学会の認定医によるカウンセリングを受ける
- 施設内倫理委員会より承認を得る
- 日本産科婦人科学会に申請し、認定を受ける
※1~4までには、最短でも3ヶ月はかかるとお考えください。
PGDの流れ
1.採卵・体外受精
着床前診断を行うためには体外受精を受けていただく必要があります。
2.胚生検
受精卵を2~3日培養させて4~8個の細胞(割球)を持つ初期胚にまで発達したら、割球1~2個を取りだす「胚生検」を行います。
3.PGD施行
取り出した割球の染色体をFISH染色という方法で調べます。
4.移植
染色体検査の結果、正常あるいは均衡型と診断された受精卵を子宮内に移植します。
基本的に胚は自然周期に凍結胚移植するようにしております。
5.妊娠後の再検査(任意)
妊娠された場合、染色体の正常性を再確認する方法として絨毛検査または羊水検査がありますが、この検査を受けるかどうかはご夫婦の判断にゆだねられます。
海外での実施状況
これまで海外において、PGD(胚生検を含める)に起因すると推測される異常児の出生は報告されておりません。
また、2012年のヨーロッパでの生殖医学会の発表によると、染色体構造異常(均衡型相互転座を含む)に対する着床前診断は約4,700周期行われ、うち約900例(19%)で胎児の心拍が確認できております。
また、2008年1月から12月までの738周期のうち、2009年10月の時点で133例(18%)が出産に至ったとされています。
PGS(着床前スクリーニング)とは
高齢者が体外受精で妊娠した場合、その流産率は60%以上に及ぶとされています。
その原因は、流産物の染色体検査の結果によると、ほとんどは染色体の数の異常(トリソミー、三倍体、45,XOなど)でした。
これは卵子の老化により、染色体が正常に減数分裂できなくなることが影響していると考えられます。
このような受精卵の染色体異常に対して、PGS(Preimplantation Genetic Screening)は、検査して正常な受精卵だけを移植する治療法です。
日本ではまだ臨床応用が認められておりませんが、欧米ではPGDよりも数多く行われています。
PGSにより流産率を下がることはできますが、妊娠率は高くなりません。
採卵数あたりの妊娠率はかえって下がる可能性があります(移植する回数が減るため)。
流産を繰り返されており、二度としたくないという方には、PGSは有用だと考えられます。