日本の将来の人口減退に対する提言

2014年12月15日

2014年11月7日の読売新聞(朝刊)に関して当院院長の提言です。

政府は少産少子の対策として、合計特殊出生率1.43を1.8に引き上げることで人口を維持するという内容の記事を発表していますが、大事な点は人口の総数ではなくて、生殖年齢層の占める割合です。高齢者が占める割合が増えれば人口は維持できるかもしれませんが、実際に日本の国を支える若い世代の数は減少していくでしょう。第1次、第2次ベビーブーム後の第3次ベビーブームが出現せず、少産少子の傾向が急激に進行している原因は2つ考えられます。第1は、晩婚化により女性の結婚年齢が高くなることにより出生率が下がる事で、第2は、東京を中心とする関東圏内に生殖年齢層が集中している点であります。この現象は各都道府県による出生率をみれば明らかになります。都会では軒並み平均値を下回る一方、その他の高値を示す県は多くが人口減少にも悩みを抱えています。最低値では東京都の1.09、最高値は沖縄の1.90となっています。これは、出産した子供たちの多くが、東京を中心とした関東圏内に移動していることを示します。また、政府の1.8を維持するという案は、単純に考えるならば1年間で30万人の出生数が必要ですが、ARTによる出生は年間約4万人であることから、これを叶えることは非常に困難と考えます。根本的な行政改革が必要と考えざるを得ません。すなわち、地方における出生率が高いにもかかわらず人口が減少し続ける現象を止めるためには、各地域での優秀な人材が、地方で労働し活躍できる環境づくりにかかっていると思われます。そのためには、いかにして各地方での人口減少の歯止めをかけるかがカギを握っており、地方の価値を見出し、それぞれの特徴を持った地方自治が確立されるしかないでしょう。以前は遷都なども叫ばれましたが、もはやこの件は話題にも上りません。このままではおよそ百年後には現在の3分の1の人口となり、明治維新の状態に戻ってしまうということを政府はよく認識し、確実に出生率が高まる方針を打ち出すべきでしょう。我々ARTを専門としてきた人間はこのような事態になることは10年以上前からわかっておりました。私の個人的な意見としては、地方活性化のためには、我々が支払っている税金の内容を変え、市県民税、地方自治体に支払われる割合を高くすることが重要と思います。政府の出すエンゼルプランや不妊治療の助成に関するマニフェスト等には、文言としては少産少子対策への案は出ていますが、ほとんど実現されていません。歳出を削減するために、従来言われている国会議員の削減などが挙げられますが、現実化されていません。政府はこの急激な人口減少に対し、確実で迅速な対応を長期的に継続していかなければ、我々の次の世代では、日本の未来が非常に危ういものになるのではないかと不安に思います。

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