毎日新聞にターナー症候群の方の出産について掲載されました

2014年11月06日

2014年11月2日の毎日新聞(朝刊)に、ターナー症候群の方の出産について掲載されました。
内容は、ターナー症候群の方が卵子提供による不妊治療で妊娠、出産した記事です。
以下は当院院長の提言です。




ターナー症候群の方は染色体異常による卵巣欠損のため、自然妊娠の報告もありますがほとんどの場合挙児は不可能となります。唯一の子供が授かる方法は卵子提供です。国内外でターナー症候群の方が卵子提供により出産しているケースは珍しくありません。日本でも、詳しいことはわかっていませんが、国外にて卵子提供を受け出産された方はおられると言われています。今回の報道はターナー症候群の患者様が第三者的な外部評価機構のJISARTセントマザー施設内倫理委員会で慎重な審議を経たのち承認されたケースであり、日本では、このような審議を経たのちの卵子提供は初めてとなります。今回の報道には大事な点が1つあります。ターナー症候群の方では多くの場合は出生時からの合併症を認め、特に心臓疾患の頻度が高く、重症な心疾患の場合には日常生活に支障をきたすこともあります。ほとんどの方が低身長で無月経ですのでホルモン治療を受けられている方は大丈夫ですが、放置しておきますと子宮はかなり委縮していきます。このような状態で、卵子提供により妊娠しますと、子宮が妊娠に耐えることができず母体へのリスクが高くなり、重篤な場合には動脈瘤破裂による死亡例も報告されており、卵子提供にふさわしいかどうかという医学的な診断が必要だということであります。 今回の患者様の場合は幼少期より小児科の先生に診て頂き、合併症もなく、体格もいいということで、将来は卵子提供で妊娠が可能であるという診断のもとホルモン療法を継続して来られたため、子宮は正常な人とほぼ同じ状態を維持できました。このような状態での妊娠、出産は医学的に十分可能であり多くの方がこのような状態で妊娠されることを希望されていると思われます。しかしながら、たとえ、妊娠前の状態が異常のない場合でも、ターナー症候群の方には妊娠後に、高血圧、腎臓機能異常、甲状腺機能異常が発生しやすいというリスクがあり、患者様もその治療を産科医のもとで、十分なケアをされておられました。その結果、37週まで妊娠を維持でき、健康なお子さんが誕生できました。このようにターナー症候群の方が出産に至るまでには、医学的に十分なケアが幼少の頃から小児科医、ひいては産婦人科医、内科医の十分な支援体制のもとで、妊娠継続が可能と診断された方には卵子提供による出産は素晴らしいことではありますが、そうでない場合には、母子ともにリスクが高くなり、ターナー症候群の誰もが卵子提供を受けられるのではないということを是非知って頂きたいと思います。

院長:田中温

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