HOST法 -精子不動症に対して-
精液中に精子がいても、全く動かない不動精子であれば受精することはできません。
 これを「精子不動症」といいます。
 精子不動症には2通りあります。
 (1)精子が死んでいる
 (2)鞭毛(精子が運動するための組織)の発育が不十分
 (1)の精子は死んでいるため受精できませんが、(2)の精子は生きており、運動機能に障害があって動けないだけです。
 そのため、(2)の精子を用いて顕微授精すれば、受精させることができます。
 (2)の精子を見つけるには、ニグロシン・エオシン染色という方法があります。
ニグロシン・エオシン染色

 赤く染まっているのは「死んでいる精子」、色が染まらなかった(白い)精子は「生きている精子」です。
 つまり、白いままの精子は治療に用いることができます。
 ただし、染色してしまった精子は治療に用いることができません。
 ニグロシン・エオシン染色は、不動精子のなかに生きている精子がいるかをまず確認するために行う検査です。
 生存精子が確認できれば、精子を染色しないまま鑑別することのできる「HOST法(Hypoosmotic swelling test)」を行います。
HOST法

 まず、写真(左)のように精子を等張液に入れます。
 次に低張液へ移すと、生きている精子は膨張して鞭毛が丸まってきます。
 このとき、死んでいる精子には変化が起こりません。
 そして、鞭毛が丸まった精子を再び等張液に移すと、写真(右)のように元の状態に戻ります。
 これが、精子を染色せずに生きているかを判別できるHOST法です。
 
 HOST法でピックアップできた精子を治療に用いた場合は、正常精子を用いるのとほぼ同等の治療成績を得ることができます。