
排卵障害とは、毎月定期的におこる排卵が障害されて不規則になってしまう状態で、若い女性の2〜3割に認められます。月経の間隔が2〜3ヶ月に1回(長い場合には、半年に1回か1年に1回)と長くなる場合と、不正出血が断続的に続き、どれが月経がわからないという二通りのタイプがあります。いづれの場合も、正常な排卵がおきていないということが、この病気の本態であります。最近、若い人に多くみられるダイエットによる排卵障害は、治療が非常に困難であり、急激な体重をおとすことが、非常に危険であるということを十分に覚えていて下さい。または、逆に急激な体重増加も排卵障害の原因となりますので、ご注意下さい。
基礎体温をつけること、次はホルモン検査(LH-RH検査)を行い、卵巣か下垂体か視床下部のどこの部位がどの程度障害されたかを調べます。その結果をみて、排卵誘発剤の飲み薬を投与するか、注射が必要かがわかります。結婚前であるならば、ホルモン治療で月経を規則的にすることが重要です。お子さんが欲しい場合には、まず飲み薬(クロミッド)で始めます。しかし、飲み薬で効果がない場合には、注射の誘発剤(HMG)を用いて排卵させます。脳下垂体又は視床下部という脳の中枢性に問題がある場合には、ほとんどの場合、HMG排卵誘発剤の注射が必要となります。
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両側、または一側の卵管の内腔が閉塞した状態です。典型的な例としては子宮外妊娠で、卵管を摘除した場合がこれにあたります。しかしながら、手術をしなくても自覚なしに卵管が閉塞することがよくあります。原因としては、クラミジア感染症・子宮内膜症・腹腔内の炎症(虫垂炎)などありますが、全く原因がわからない不明ということもあります。
子宮卵管造影検査で卵管の通過性を確認します。写真は、子宮卵管造影写真の結果で、図1は両側の卵管が通っている状態、図2は左側(向かって右側)の卵管が完全閉塞している状態です。
卵管が閉塞している場合(もしくは狭窄:狭くなっている場合)には、卵管を通過させるための治療として、通水治療やFTカテーテル治療があります。
通水治療は、だいたい週1〜2回の割合で5〜6回行い、再度、子宮卵管造影検査を行います。
FTカテーテル治療は、子宮に近い卵管部分が閉塞(もしくは狭窄)している場合に非常に有効な治療法です。術後は、通水検査にて通過性を確認します。FTカテーテル治療は、当日帰宅が可能で、手術時間は約30分で終わります。個人差もありますが、局所麻酔または静脈麻酔を行いますので、術中の痛みはほとんどありません。
【参考】
FTカテーテル治療 4名が自然妊娠
FTカテーテル治療にて良好な結果
通水治療もしくはFTカテーテル治療にて、卵管の通過性が確認できた場合には、精子の状態や女性の年齢などに応じて、自然妊娠、タイミング療法、人工授精を検討します。どうしても卵管が通過しない場合には、体外受精の適応となります。
(※初めから体外受精を希望される方は、通水治療やFTカテーテル治療の必要はございません)
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(2010年8月30日更新)
卵管のまわりが癒着している状態です。原因は子宮内膜症・腹膜炎・クラミジア感染症・子宮筋腫・過去の開腹手術などが考えられます。特に、過去に開腹手術をされている方では約70〜80%の確率で、卵管の周囲が癒着してしまいます。ですから、開腹手術をする場合には、ある程度、卵管の周囲が癒着してしまうということは、覚悟しなければなりません。
腹腔鏡下に癒着を剥離する方法(写真参照)があります。但し、癒着がコンクリートづけのように強度の場合には、癒着の剥離は不可能となるので体外受精に入ります。
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性行為によって、性器に感染する病気です。クラジミア感染と淋病感染が男性と同様、代表的な原因になります。女性の場合は、まず、子宮頚管に感染しますが、ほとんどの場合、この時点ではおりものが少し増える以外の自覚症状はありません。そのため、感染しているという自覚症状が乏しく、感染は頚管から卵管、さらに腹腔内へと進行します。その結果、卵管炎、腹膜炎を起こし、卵管閉塞や卵管周囲癒着など、不妊症の原因となります。クラジミア感染と淋病感染が合併する率も高く、この場合には感染力が増します。その結果、感染部位が広がって、さらに不妊の原因となる確率が高くなります。女性感染者の約70%以上に自覚症状がない点が注意すべき点です。早期に対処するためには、おりものが増えたり、軽い下腹部痛など、軽度な症状であっても、産婦人科を受診し、検査をしましょう。
検査の結果、陽性であっても、パートナーと共にお薬を飲むことにより、ほぼ完全に治すことができます。もしも、完全な治療をしない場合には、パートナー間の感染がいつまでも続くことになりますから、治療は最後までしっかり行いましょう。
子宮内膜症とは、月経時に剥奪してくる子宮内膜という組織が、子宮の筋層内および子宮以外のおなかの中の組織(卵巣や腹膜)などに飛び散った状態です。最も頻度が高い部位は卵巣です。卵巣に子宮内膜の組織が転移しますと、卵巣内に古い血液が貯溜し、大きく腫大していきます。(貯溜した血液の色調からチョコレート嚢腫とも呼ばれます。)その結果、下腹部痛などの症状を訴えることがあります。子宮の筋層の中に内膜が進入した場合には、子宮が大きく腫大していき、月経痛ないしは過多月経を伴います。子宮内膜症の1つのパターンとして子宮腺筋症がありますが、子宮腺筋症の症状は、子宮筋腫とよく似ています。 この病気は、良性であり、悪性ではありませんが、「完全には治らない」「再発する」「卵巣の正常な部分が除々になくなる」などの点より、不妊症の大きな原因となっております。子宮内膜症の疑いを持たれた方は、早く腹腔鏡検査を受け、正確な診断と広がり具合を観察することが必要です。
子宮内膜症の治療法には、GnRHアゴニスト(スプレキュア、ナサニールなど)の内科的治療にて発育を抑える方法があります。この方法では、完全には治りません。その他には、腹腔鏡下および開腹の手術治療があります。しかし、いきなり手術操作に入るには抵抗がある場合には、経膣的に行うアルコール固定という方法もあります。ただし、この方法にも長所と短所があります。長所としては、外科的な操作が不要であることです。直径が5cm以上に大きくなっている場合には内科的な薬物投与ではほとんど効果がありませんので、アルコール固定が効果的です。短所としては、再発率が30〜40%あり、100%完全な治療法ではないことです。しかし、アルコール固定を2〜3回繰り返し行うことにより、再発率も10〜20%と低下します。
アルコール固定は、採卵と同じように軽い麻酔下で経膣的に卵巣内に針を挿入し、内容物を吸引し、空になった卵巣腫瘍内にアルコールを注入します。何回か洗浄、注入を繰り返します。アルコールの作用で、腫瘍細胞を変性に陥らせ、治癒させることができます。アルコールが腹腔内にもれると、腸管にダメージを与えることもありますので、抗生剤(テトラサイクリン)などを注入し、癒着させる方法もあります。
アルコール固定を2〜3回行っても再発したり、アルコールのもれが予測されるようなケースでは、アルコール固定のかわりに、腹腔鏡下手術をおすすめしています。もちろん、予め、超音波および血中腫瘍マーカーを事前に行い、この卵巣腫瘍が悪性ではなく、良性であることを確認します。
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子宮腺筋症は、子宮内膜症の一つのパターンで、子宮内膜症が子宮の筋層の中に、広がった状態です。症状としては、子宮筋腫と非常によく似ており、超音波などで大半は診断がつきますが、最終的には組織を手術時に取り出し病理的に診断しないとわからない場合もあります。
GnRHアナログ、ダナゾールやホルモン剤などで発育を抑えますが、完全には治りません。未婚の方の場合には、このお薬を使って様子をみるようになりますが、お子様が早くほしい場合には、腹腔鏡で子宮内膜症のすすみ具合を観察し、自然妊娠が可能か否かを判断することは重要です。卵巣が大きく腫大している場合には腹腔鏡下の手術を行い、もし周囲の子宮や腸と癒着がひどい場合には開腹手術ということになります。
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卵巣嚢腫とは、両側の卵巣、または一側の卵巣が腫れた状態です。この卵巣嚢腫には、正常なものから異常なものまで含まれます。卵巣は、月経周期によって3cmぐらいまで腫大することがありますので、原則的に2〜3ヶ月様子をみて大きさが変わらない場合には、卵巣嚢腫を診断します。卵巣嚢腫の原因としては、子宮内膜症・皮様嚢腫(髪の毛や油や歯などができる腫瘍)・単純嚢腫(排卵した後の黄体が大きく腫れる状態)が多く認められます。悪性の卵巣癌などもありますが、頻度としては良性の方が圧倒的に多くなります。卵巣が腫れることにより、卵管の周囲に癒着が生じてしまい、不妊の原因となることもよくあります。子宮内膜症の場合には、その確率が高くなります。ほとんどの場合は、超音波で悪性か良性か診断がつきますが、最終的には嚢腫組織を顕微鏡でみなければわかりません。
良性の卵巣嚢腫の場合には、経膣的に細い針を卵巣の中に入れ、内容物を吸引してアルコールで消毒する方法が有効です(アルコール固定)。1回の操作で、約60〜70%は腫れなくなりますが、再発する可能性も20〜30%あります。再発した場合には再度アルコール固定を行うこともありますが、何度やっても再発する場合には手術的な治療となります。その場合には、腹腔鏡下手術も有用な治療となります。
子宮筋腫とは、子宮の壁に筋肉のこぶができる状態です。その大きさや部位によって治療法と症状が異なってきます。筋腫が非常に大きくなった場合には、おなかの上からふれるようになります。このようになった場合には、赤ちゃんの頭程の大きさになっていると考えていいでしょう。
症状としては、過多月経(月経の量が多くなる)・月経困難症(月経時の痛み・疼痛がひどくなる)・貧血などがあります。大きさはそれ程でなくても、粘膜下筋腫(子宮の内腔内に筋腫ができる)の場合には、月経時の出血が多くなるので貧血になりやすくなります。また、流産を繰り返すということも一つの症状として挙げられます。
基本的に、子宮の大きさが手拳大以上となった場合や、サイズは小さくても貧血や月経困難症が非常に強くなったような場合には、治療の対象となります。それ以外の場合には経過観察でいいと思います。現在では、GnRHアナログというお薬で筋腫自体を小さくする方法があります。しかし、この方法は更年期様症状が現れるため長期間使用できず、完全には消失しないという限界もあります。最終的には開腹手術(腹腔鏡下)も考えなければならないでしょう。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは、脳下垂体から出るホルモンの異常で、卵巣の機能が障害され、かつ卵巣の表面が硬くなって排卵が十分にできなくなる状態です。(左写真のように卵管の表面が白く硬くなります。その中に排卵できなかった卵胞がイクラのように認められます。)月経が不順となり、2〜3ヶ月、3〜4ヶ月に1回というように、排卵がおこらなくなってしまいます。また、肥満・多毛・糖尿病などという症状を伴うこともあります。診断の際には、ホルモン検査(LH-RHテスト)、超音波検査(月経時にすでに卵巣内に小さな卵胞が10個以上認められるネックレス様)を行います。糖尿病を合併することも稀ではなく、糖尿病の検査も行われます。
まずは内服の排卵誘発剤(クロミッド)を使ってみます。このお薬で排卵しない場合には、HMGやFSHの注射の投与が必要となりますが、十分な注意と管理をしなければ卵巣が腫れてしまうという副作用が起こる可能性があります。卵巣が腫れやすい場合には、腹腔鏡下に卵巣の表面を焼灼する腹腔鏡下卵巣焼灼術(写真右)が有効です。この方法は、非常に有効な方法で、約半数で自然排卵、残りの半数は飲み薬(クロミッド)で排卵がおきるようになり、自然妊娠も十分期待できるようになります。しかし、この効果は約1年位でなくなってしまいますので、早く妊娠するように指導いたします。もし効果が消失した場合には、何度も繰り返し卵巣焼灼術を行うことはできます。
糖尿病(II型)を合併している場合には、糖尿病薬(メトフォルミン)を服用します。肥満を合併している方には、食事療法と運動療法でBMIが25以下となるように指導します。体重が正常域に戻るだけで、自然排卵して妊娠することもあります。
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プロラクチンという脳下垂体から分泌される出産後に、乳汁分泌を促すホルモンが避妊時に高くなると排卵障害をおこす原因となります。症状としては、避妊時に乳汁が出るということや血液検査でプロラクチンが高くなるということが認められます。プロラクチンの濃度が高くなることにより、排卵障害や着床障害がおき、子供ができにくくなってしまいます。
プロラクチンの濃度を下げる飲み薬でほとんど正常となり、月経も規則的となり妊娠しやすい状態になります。
女性の体の中に精子に対する抗体ができてしまい、膣内に射精された精子が、子宮内を通って卵管のまわりに到達できなくなる状態です。血液を採取すれば、結果は簡単にわかります。抗精子抗体における検査の信頼性はそれ程高くなく、この結果は不妊の原因と余り関係がないという報告もあります。
抗精子抗体陽性の場合には、人工授精または体外受精ということが必要になることもあります。
以下に「不育症」の原因の主なものについて列挙します。
胎児の染色体異常(両親の染色体は正常)
一般的な流産の原因としては、最も多いといわれており、特に治療の必要がない、たまたま起こった流産です。加齢により流産率は増加します。
抗リン脂質抗体症候群(膠原病などの自己免疫異常や血液凝固異常を含む)
流産のメカニズムは胎児へ血液を供給する微小血管内で血液が凝固して血液障害を起こすことによるもので、現在は「抗凝固療法」(低用量アスピリン療法やヘパリン療法との併用)が行われています。
検査結果から「抗リン脂質抗体症候群」が強く疑われる場合には、妊娠前(高温期や排卵時)から、低用量アスピリン療法とヘパリン療法を併用する方法が効果的であるといわれています。ただ、アスピリンは内服でよいのですが、ヘパリンは妊娠期間中ずっと連日皮下注射が必要となります。治療期間中は凝固機能について適切に検査を行って慎重に管理していく必要があります。
また、臨床の現場では、様々な検査にもかかわらず、不育症の原因がはっきりつきとめられない場合も多く、そのような場合でも、多くの施設で患者側の希望によっては、医師と相談の上で「低用量アスピリン療法」を選択することがしばしばあるといわれています。
SLEなどの自己免疫疾患に対しては、ステロイドホルモンを用いることもあります。漢方薬としては「柴苓湯」が処方されます。
【検査項目】
抗核抗体、抗CL・B2GPI複合体抗体、ループスアンチコアグラント、抗カルジオリピン抗体(IgG・IgM) (自費)、抗フォスファチジルエタノールアミン抗体(IgG・IgM) (自費)、抗フォスファチジルセリン抗体(IgG・IgM) (自費)、aPTT、PT、第XII因子活性、proteinC、proteins、抗DNA抗体、抗SS-A/RO抗体、AT-V
同種免疫異常
本来「他人」である夫の遺伝子を半分持っている胎児が母体の子宮内で拒絶反応を起こさずに着床し発育するために、妊娠によって母体の免疫機構に変化が起きていることが考えられますが、そのような「免疫学的に寛容な状態」のバランスが崩れて破たんしていると、流産につながるという考え方です。治療としては、「夫リンパ球移植」が行なわれています。しかし、同種免疫異常を前もって予知する有効な臨床検査や治療方法について、誰もが受けられるまでには確立できていないのが現実です。
「夫リンパ球移植」については、今日、その効果を疑問視する研究者の報告も少なくありません。また、アメリカでは、その効果と安全性の面から、政府機関(FDA)より、治療法自体を「禁止」する通達が出され、現在はまったく行われなくなりました。しかし、日本国内の臨床の現場においては、「夫リンパ球移植」による治療の効果を評価して、今なお多くの医療施設において行われています。
検査方法としては、NK細胞活性、Th1/Th2比、遮断抗体活性、抗夫リンパ球抗体などが挙げられます。(全て自費)
黄体機能不全
黄体ホルモンを補充します。
夫婦いずれかの染色体異常(均衡型相互転座など)に起因する胎児の染色体異常
精子と卵子の組み合わせによっては、正常の染色体の胚ができることもあり得ます。
クラミジア・トラコマティス、淋菌、その他の菌による子宮内感染症
感染に対して抗菌剤を投与します。
子宮頚管無力症
妊娠中期にシロッカー式手術など、子宮頚管縫縮術を行います。
子宮奇形・子宮筋腫・子宮腺筋症
必要に応じて手術を行います。
糖尿病
内科的に血糖のコントロールをします。
甲状腺機能障害(亢進症、低下症)
薬の内服によって、甲状腺の機能をコントロールしますが、患者様にはすでに原疾患による様々な自覚症状が出現しているはずです。
遺伝子疾患による流産
その他(ストレス・カフェイン・免疫異常など)
流産手術時に胎児の繊毛組織などを無菌的に採取して、染色体検査に提出します。費用は約5〜6万円かかりますが、保険は適応されず、全額自費負担となります。
一般に、流産で最も多い原因は、胎児の染色体異常なのですが、その大半は両側の染色体は正常です。その場合にはたまたま起こった異常であり、次回妊娠時の治療は必要ありません。また、女性が高齢になると、卵子形成における減数分裂で「染色体の不分離」が起きやすくなるため、胎児の染色体異常による流産は増加します。胎児染色体検査の結果が流産の原因の追究や治療方法に反映されるかどうかは、取り巻く状況によると思われます。両親の染色体検査も行う必要があります。
もし両親のいずれかに染色体異常(均衡型相互転座など)がある場合には、着床前診断の適応も考えられます。






