
「雲の向こうに・・・」
第1話 出版までの軌跡
第2話
私達は子供を欲しかった
第3話 「子供はまだ?」
第4話 友人・知人のおめでた
第5話 決断
第6話 体外受精
第7話 最後の戦い
第8話 双子
第9話 奇跡
第10話 試練
第11話 消えぬ悲しみ
第12話 夫婦
第13話 かけがえのない経験
第14話 主人の本音
最終話
最後に 読者の皆様へ
不妊治療をしていた当時、私は不妊治療経験者の声を聞きたいと願っていました。綺麗に並べられた言葉ではなく、偽りのない本心に触れたいと思っていました。
その思いがこの手記の礎となり、自分の心とずっと向かい合ってきました。
手記を綴る事で、不妊治療中、心にひっかかっていたキーワードを一つ一つ紐解いていきました。
自分の気持ちをごまかさず素直に表現する事は、想像以上に難しく辛い事でした。
今まで潜んでいた自分の弱さや当時の切ない思いを手記により改めて知る事となり、不妊治療も子宮外妊娠も未だ過去の出来事ではない事を痛感しました。
とは言え、今現在の私は、不妊治療をしている訳ではありません。
そんな私に、読者の方々の心に届くものが書けるかどうか常に不安でした。内容が現在に近づくにつれ、その不安や迷いは大きくなり、幾度も躊躇しました。しかし、「今の私だから伝えられる事があるはず」と自分に言い聞かせ、今日まで何とか書いてきました。
「今の私だから伝えられる事とは何か」
それは、手記を始めた段階から、ずっと考え続けていた事でした。
毎回のテーマと向き合う度、無意識のうちに伝えたいと願ったある強い思い。
それは、「一人じゃない」というメッセージでした。
妊婦や赤ちゃん連れの女性を見たくない気持ち。友人のおめでた報告に喜べない事への罪悪感。周囲から、「子供はまだ?」と度々言われる事への嫌悪感・・・。
当時これらを感じる私は、とても心の狭い、弱い人間なんだと自己嫌悪に陥り、私だけが感じる事だとずっと思い込んでいました。
又、感情をぶつけても期待通りの反応を示さない主人に対し、「無理解だ」と心の中で責めていました。
ずっと、「私は一人だ」と思っていました。
しかし、今はそう思いません。
私が当時抱いた感情は全て、多くの方々も同様に感じている事であり、とても自然な感情だと思います。そして、その感情を抱いているのは自分だけだと思っている方も多いのではないかと思います。
また、主人に関しても、口には出さなかったけれど主人なりの思いがあり私を気遣っていた事、今更ながら気付かされます。
当時の私は、「不妊の原因は自分にあるんだから、この苦しみの重荷は一人で背負わなければならない」と勝手に思い込んでいました。故に、「(不妊治療が)辛い」と洩らした事は一度もありませんでした。
弱音を一言でも漏らすと、二度と不妊治療に立ち向かう事ができなくなるような気がして、歯を食いしばり意地を張り続ける他ありませんでした。
今思えば不妊治療は、一人で背負うにはあまりにも重く、あまりにも辛い重荷でした。
もしも当時、私が背負うその重荷を、主人にもっと理解してもらおうとしていたなら・・。
「私は一人ではない」と、気付く事ができていたなら・・。
もしかしたら、その重荷は、背負いきれない程のものではなくなっていたかもしれません。
これが、不妊治療から長い歳月を経た今、私に伝えられる全てです。
今回、無事最終話を迎える事ができました。今はただ、一経験者として精一杯綴ったこの手記が、読者の方々の心に寄り添える物であって欲しいと願うばかりです。
この手記を読んでくださった方々、本当にありがとうございました。
読者の方々の中には、心に閉じ込めていた感情が噴き出してしまい、辛い思いをされた方もいるのではないでしょうか。もしそうであるなら、本当に申し訳なく思います。
手記を読み、私のブログをわざわざ訪ねてくださった方々は、きっと遠い道のりだった事でしょう。
そして、皆様がくださったコメントやメールは、私にとって手記と向き合う原動力となりました。メールやコメントをくださった方々、本当にありがとうございました。
まるで厚い雲に阻まれたかのようにずっと立ち往生していた私も、手記を終え、ようやく雲の切れ間に広がる綺麗な青空を見つけたような、そんな気がしています。
「雲外蒼天」
これは、主人がとても好きな言葉です。
どんな厚い雲に阻まれていようとも、その向こうには綺麗な青空が広がっています。それを見つける日が、どなたにもいつか必ず来る事を信じつつペンをおきます。
2007年9月1日
新田 綾






