
「雲の向こうに・・・」
第1話 出版までの軌跡
第2話
私達は子供を欲しかった
第3話 「子供はまだ?」
第4話 友人・知人のおめでた
第5話 決断
第6話 体外受精
第7話 最後の戦い
第8話 双子
第9話 奇跡
第10話 試練
第11話 消えぬ悲しみ
第12話 夫婦
第13話 かけがえのない経験
第14話 主人の本音
最終話
最後に 読者の皆様へ
体外受精を決断したのは、子宮外妊娠から一年が過ぎた頃―。 検査結果で「体外受精以外、子供を作る手段はない」と告げられて間もなくのことでした。
周りが、私達の子供を心待ちにしている事は痛感していました。
その気持ちが私の上に重くのしかかり、子供がいないまま生涯を終える事への恐怖にしばしば襲われました。
自分は自分・・。
人と比べる事はやめよう。
何度自分に言い聞かせても、つい人と比べてしまい、「羨み・妬む」気持ちが湧き出てきました。
他の人は簡単に子供ができるのに、何故私には子供ができないのだろう?
神さまは本当に不公平だ!
当時、子宮外妊娠の悲しみに翻弄され、自暴自棄な気持ちもあったのかもしれません。
心の中で神を恨んでは、周囲を無理解だと責めていました。
確かに、体外受精をしなければ子供は無理だと言われた事はショックでした。
また、あれほど子供が欲しいと願っていた主人にとって、何て辛い検査結果なんだろうと思いました。
その検査結果を知ったセントマザー産婦人科医院からの帰り道、
『一生子供を抱かせてあげられないかもしれない』という罪悪感でいっぱいだった私は、「ごめんね…。」と言う以外何も言えませんでした。
主人はびっくりした様子で私の顔を見た後、押し殺したような声で「謝るな」と一言だけ言いました。
『私を気遣って他に何も言わないけれど、この人はきっと、子供ができないかもしれない事が辛いんだ。私と結婚したばかりにこんな目に合わせてしまった。』
私はただ黙ってうつむいているだけでした。
主人がこの事を理由に離婚を切り出す事は決してないとは思っていました。しかし、仮にそういう事態に陥った場合、これも受け入れざるを得ない悲しい現実なんだと憤りも感じていました。
先日、主人と当時の事を久しぶりに語り合いました。
私は、「自然の妊娠が無理だと知った時、ショックだった?」と尋ねてみました。
主人は、
「それよりも、その事でお前が謝ってきた事の方がショックだった」と言いました。
主人は、子供は欲しかったけれど、できないなら夫婦二人で生きていくのも悪くないなと考えていたそうです。
そして、
「お前との間に子供ができないからと言って、お前以外の人と子孫を残したいとは思わなかった。俺はお前と俺の遺伝子を持つ子供がいいんだ」と言いました。
私は、嬉しくて思わず涙がこぼれました。
そしてこの言葉は今、私の胸に深く刻まれています。
当時私は、
「一日でも早く体外受精をしたい!」とその強い気持ちを主人にぶつけました。すると何の反論もなく主人は賛成してくれました。
正直、この現実から逃げ出したいという気持ちもありました。しかし、逃げ出したら一生子供に会う事はできない。今は現実に立ち向かっていくしかないと決意を固めていました。
今考えると、現実と対峙して逃げも言い訳もせず完璧に立ち向かったのは、今までの人生においてこの試練が初めてだったと思います。
主人と私は三回までの体外受精を一つの区切りにしようと話し合い、もしそれで駄目な場合、二人だけの人生を選択するという結論に達しました。
その時は内心、一度の体外受精でできるのではないかという期待も少なからず抱いていました。
様々な葛藤の末、過去を振り返って考えてみると、あの時不妊の原因がはっきり分かったからこそ早く覚悟を決め、体外受精を受ける決断ができたのではないかと思います。
もし、いつまでも不妊症だという事実と向き合う事がなかったら、私は体外受精について知識を得る努力もせず、当然治療を受ける覚悟さえもできなかったかもしれません。






