[2007年8月21日]
習慣性流産の患者様に対して、着床前診断を実施し、2組の御夫婦が妊娠いたしました。両御夫婦とも、年内の出産予定です。
着床前診断の対象が習慣性流産の患者様に対して拡大し、申請が承認されてから、初の妊娠例となります。この成果は、この成果は、2007年8月12日の毎日新聞にも取り上げられ、2007年8月30日に行なわれる日本受精着床学会で発表する予定です。
何度も流産を繰り返し、大変辛い思いをされている御夫婦に対して、着床前診断の意義を御説明し、御希望の際には、できる限りの御協力をしていく所存でおります。
[2007年7月14日]
習慣性流産の患者様が受精卵診断にて、妊娠し、胎児の染色体検査の結果に異常がないことが確認されました。経過は順調で、年内に出産の予定です。
何度も流産を繰り返す習慣性流産の方の治療として、受精卵診断が定着していくための大きな一歩であると考えております。
[2007年5月6日]
当院では、「ビューティエクササイズ」を毎週水曜日11時から開催しています。
このエクササイズに参加いただいた患者様の治療経過を調査したところ、エクササイズに参加されている方の妊娠率が高いことがわかりました。
ビューティエクササイズ参加者の妊娠率
タイミング: 83.3%(5/6) 【30〜35歳:4名 20歳代:1名】
人工授精: 100%(2/2) 【30〜35歳:1名 35〜40歳:1名】
体外受精: 70.6%(12/17) 【40歳以上:2名 35〜40歳:4名 30〜35歳:4名 20歳代:2名】
妊娠をしていない方々は、まだ1回しか参加していない方々がほとんどです。この結果より、定期的なエクササイズが、治療によい影響を与えていることがわかります。
エクササイズを行うことで、血行が良くなって冷え性が改善したり、ダイエットになって月経周期が規則的になるなどの効果があると考えています。
また、楽しく運動をすることで、治療の大敵であるストレスも解消できるものと期待しています。現在のところ、まだ参加者が少ないため、今後も引き続き、経過を追っていく必要がありますが、今回の結果は、大変すばらしいといえます。
このビューティエクササイズは、当院の患者様なら、どなたでも無料でご参加いただけます。当院2階の本格的なスタジオで、楽しく運動し、治療のストレスも解消しましょう。参加をご希望の方は、受付までお申出下さい。
[2007年3月25日]
高齢の方は、未成熟な卵の率が多くなり、正常な受精卵ができにくいという傾向があります。
当院では、未成熟な卵子から核だけを取り出し、核を取り除いた第3者の成熟した卵子に、その取り出した核を入れて、受精させるという研究を行っています。これが、卵を若返らせる「核置換」という方法です。
この研究は、不妊に悩むご夫婦と日本産科婦人科学会の承諾を得て行っており、これまでの成果として、胚盤胞にまで成長することを確認しております。しかしながら、染色体異常など、核置換による影響については、疑問を残しておりました。
今回、弘前大学との共同研究で、マウスの実験を行い、核置換にて受精した受精卵12個について、観察を行ったところ、核の中の染色体はすべて正常であることが確認されました。対して、核置換をしなかった未成熟な卵子を受精させた結果、約90%が核の中の染色体の数が減るという結果が得られました。これは、高齢になるにつれて、染色体が形成される際に必要なたんぱく質が不足することが原因ではないかと考えております。
現在は、日本では卵子提供は認められておりませんので、実用化にはまだ時間がかかるとは思いますが、今回の成果は、高齢の方や卵子が成熟しない方にとって、大変よい結果になったのではと思います。今後も皆様によい結果をご報告できるよう、引き続き、研究を重ねていきたいと思っています。
[2007年3月11日]
染色体転座による習慣流産に関して、当院において着床前診断を行うことが、日本産科婦人科学会より認可されました。
今後も、日々の研究を重ね、多くの方に希望を与えられる治療を目指していく所存でおります。
[2007年1月22日]
染色体転座が原因の習慣性流産における着床前診断の申請が2006年12月16日の日本産科婦人科学会の理事会で承認されました。
当院からは2組、名古屋市立大学では4組、IVF大阪クリニックでは1組が認められました。染色体転座以外でも、ミトコンドリア病の着床前診断(慶応大)も承認されました。
読売新聞社の著作物について http://www.yomiuri.co.jp/policy/copyright/
[2007年1月9日]
胚移植後、着床するためには、黄体ホルモンと卵胞ホルモンの相互作用が必要であることは認められています。体外受精(IVF)が始まって以来(約20年間)、黄体機能補充に関しては、主に黄体ホルモンの投与(筋注が主流)が行われてきました。その方法は、現在も変わっておりません。
GnRHアゴニスト(スプレキュア・ブセレリン・イトレリン等)やGnRHアンタゴニストを使うと、黄体機能が不十分となり、黄体ホルモンやエストロゲンの分泌が低下します。また、内膜に直接影響して、着床を抑制してしまうこともありますので、黄体ホルモンの投与、さらに最近では、エストロゲンの追加投与も必要であるといわれています。
現在、移植後の黄体ホルモン(プロゲステロン)を測定して、その濃度によって、黄体ホルモン投与量を増減することが行われています。しかし、濃度によって、どのような補充を行えば、着床率を向上できるかについては、はっきりとわかっていません。
黄体ホルモン補充のためのお薬には、大きく分けて2種類あります。通常は、プロゲステロン(筋注・膣錠等)を用いますが、場合によっては、黄体ホルモン剤(飲み薬)を使用します。これらは、妊娠継続・着床継続という点では、生物学的に同等の効果を発揮します。
プロゲステロンの筋注・膣錠等は体内中の同じものなので、投与を行えば、血中にプロゲステロンとして濃度が測定されます。しかし、飲み薬の黄体ホルモン剤等は、化学的にプロゲストロンとは異なりますので、血中濃度は0となり、検査結果としては、非常に低い値となります。ですから、どのお薬で補充を行っているかによって、測定結果は異なります。濃度測定によって補充方法を考えることが困難であることは、このような点からも御理解いただけると思います。
体外受精(IVF)・顕微授精(ICSI)の妊娠率は、いかに質の高い卵ができるかで決まるといっても過言ではありません。
良い卵子が発育すれば、良い卵子が排卵され、その結果、黄体機能が良くなり、着床しやすくなります。逆に言えば、黄体機能が悪いということは、良い卵子が採れていないということになります。
では、どのようにすれば良い卵子が採れるか・・・ということになりますね。
卵の質は、排卵誘発剤の種類や量で決定されるのではなく、排卵誘発を始める時の卵巣機能状態で、ほとんど決まっていると考えてください。要するに、いかに反応のよい卵巣状態で、排卵誘発を始められるかがキーポイントなのです。
即ち、工夫をして排卵誘発を行って卵を作り、採卵後にホルモン測定をして、ホルモン剤投与を行ったとしても、妊娠率が急激に高くなることは、あまり期待できません。過去20年間における不妊治療の流れをみても、黄体機能補充で妊娠率はそれ程向上していません。
そこで、我々は、着床率向上のために、新しい治療法を行っております。それは、全胚凍結・自然周期移植です。
ヒト以外の動物実験(ウシやマウス)では、胚移植の成功率は60〜70%と非常に高いという事実があります。それは、マウスAから採卵した卵を自然状態の別のマウスBに移植するからです。一方、ヒトの場合は、一般的に、採卵した周期に(同じヒトに)胚を戻します。我々は、ヒトの妊娠率が低い要因はその違いにあると考えています。
採卵周期に排卵誘発剤(多量の注射・HMG・FSH・GnRHアゴニスト・アンタゴニスト等)を用いた場合には、どうしても卵巣機能は低下します。そこに黄体ホルモンを多量に投与しても、正常の状態には程遠い状態だと考えられます。
ですから、当院では、GnRH-アゴニストやアンタゴニストを使った周期では、原則的に、すべての胚を凍結し、卵巣機能を正常に戻った自然周期に移植するという治療方針を立てております。但し、様々な事情で採卵周期に移植を希望される場合や、内膜の状態が良好である場合には、長期培養をして移植するようにしています。
全胚凍結・自然周期移植を行えば、卵巣機能が正常に戻っていますので、最も環境が最も良好な内膜に着床できるようになり、着床率も必ず高くなります。当然、この方法を行うことによって、ホルモン測定はもちろん、黄体ホルモン注射や膣錠投与は不要となります。
ですから、当院では、全胚凍結・自然周期移植を不妊症治療の主軸としています。我々は、この治療法に自信を持っており、自然周期移植における妊娠率は60%を超えております。
[2007年1月9日]
着床した場合には、採卵後2週間で、尿中HCGに妊娠反応が陽性に出ます。妊娠反応の判定は、尿中HCGの他に血中HCGの濃度を測定する方法もあります。
血中HCG測定は、非常に敏感な検査ですので、妊娠判定が微妙な時点でも妊娠陽性と出る場合があります。また、黄体機能補充の目的で、胚移植後にHCG(プロファシー・プレブニールなど)を投与した場合は、そのお薬の影響で、高い割合で妊娠反応が陽性に出てしまいます。すなわち、血中HCG濃度測定の場合は、着床していない場合であっても、陽性反応が出てしまい、その結果、初期流産と診断される割合が非常に高くなってしまいます。このような点を考えると、妊娠陽性であると患者様に伝え、その後、直ちに始まった月経を「初期流産」と診断することが、医学上本当に正しいことがどうか疑問に思います。
我々が目指している不妊治療は、ごく初期の初期流産をみつけることではなく、安定した正確な妊娠です。曖昧な判定によって、患者様に不要な心配事を与えるだけでなく、初期流産を何度も繰り返す「習慣流産」と診断されて不要な検査を行なう可能性もあり、精神的にも経済的にも患者様に負担がかかってしまう恐れがあります。
そういった点では、血中HCGよりも、尿中HCGで妊娠反応を行なう方が、正確なのかもしれません。尿中HCGについては、我々が行っている検査感度と、市販の妊娠検査薬の感度はほとんど同じですので、ご自身で判定していただいても問題はありません。
最近では、次回の治療対策として、HCGの測定を行なうこともあるようですが、それが本当に役に立つかどうかは疑問です。また、初期のごくわずかなHCGの存在が、果たして着床したための結果なのか、それとも誤った測定の結果なのかは、よく分からないのが現状です。当院でも、血中HCG濃度測定も併せて行い、このような不明な点を追求していきたいと考えています。
現時点では、当院の治療において、体外受精・顕微授精の妊娠率が最も高くなる方法は、全胚凍結・自然周期移植です。この方法では、黄体機能補充を行なう必要はなく、次回の治療方針を立てる妨げはありません。ですから、全胚凍結・自然周期移植は、最も自然に近い信頼できる治療方針だと考えます。
[2006年12月27日]
無精子症の方の治療において、精子細胞に酵素処理を行った後に凍結、顕微授精を行うことにより、妊娠率が向上することは、11月19日のトピックでお知らせし、多くの方からお問い合わせをいただいております。
「不妊治療Q&A百科事典(http://www.funinqa.info/)」でもお答えしておりますように、当院では、数年前から酵素処理を行っております。今回の記事は、新しく開発した治療内容を御報告したものではなく、我々が過去より行ってきた治療成績を再評価したものです。
無精子症の方の治療法には、他にも電気刺激などの技術もございますが、最も重要なのは、採取した組織の中から、確実に精子細胞を見極めるための「目と技術力」であると考えております。優秀なスタッフがそろっているラボは、当院の誇りです。(院長:田中温)
今回、大変わかりやすい解説で有名な一般向け科学雑誌ニュートン(Newton)2007年2月号にも取り上げられました。
ニュートンのサイトはこちら Newton Press Web http://www.newtonpress.co.jp/
[2006年12月13日]
加齢に伴う卵子の数や質の低下は、ある程度、避けられないもので、女性の年齢があがると妊娠率は低下し、流産率は上昇します。
高齢の方の成功率をなんとか上昇させるための努力や工夫は、我々にとって重要であり、課題としている点です。今回は、高齢の方の治療に着目し、最も適した治療法を考察するために当院で行った治療データを整理し、その結果から、気がついた点をまとめた結果を報告します。
まとめ ※詳細は上記のPDFファイルをご覧下さい
- 凍結胚移植をした場合は、全体の妊娠率だけでなく、生産率(継続率)も高くなる。これは、高齢の方のARTの成功率は胚の質で決定されるという従来の考えと異なり、決して卵子の質のみではなく、着床の条件も生産性に関与していることを示している。
- 胞状卵胞数を観察し、その結果により排卵誘発法を選択し、できる限り多くの卵胞の発育を試みる。しかしながら、胞状卵胞数が少ない場合には、強いGnRH-アゴニストやGnRH-アンタゴニスト、ゴナドトロピンの投与は、かえって卵胞の発育を障害する場合も多く、注意を要する。
- 胚の発育が良好な場合には、極力全胚凍結し、自然周期胚移植を心がける。
- 胞状卵胞の数が多く、不揃いの場合には、低容量ピルないしは中容量ピルを1〜2周期行う。しかし、この場合も、超音波で胞状卵胞の数、大きさをよく観察し、胞状卵胞の数が極端に減少しないように心がける。
- 高齢者の体外受精胚には、染色体の13、16、18、21番などのトリソミーの発生率が高くなり、このaneuploidyが高齢者の高い流産率の原因と考えられている。それ故、今後流産率を低下させる為には、胚移植時のPGS(Preimplantation Genetic Screening)が高齢者には将来は必要となるかもしれない。







