[2006年11月19日]
当院では、無精子症で、精子が見つからなかった方々の治療として、精子になる前の精子細胞を用いた治療を行っております。しかしながら、精子細胞を用いた顕微授精の妊娠率は数%にとどまっておりました。
当院での研究により、精子細胞組織を酵素でバラバラにほぐした状態で凍結することによって、状態のよい精子細胞を選別できることがわかりました。酵素処理をした精子細胞を用いて顕微授精をすると、これまで数%であった妊娠率が、約25%にあがることがわかりました。これまで、非配偶者間人工授精(AID)を選択するほかなかったご夫婦の希望をつなげるご報告となれば幸いです。詳しくは当院までお気軽にお問い合わせください。
この成果は、2006年11月10日から行われた日本生殖医学会で発表し、翌日11日に毎日新聞にも取り上げられました。
[2006年07月25日]
排卵誘発中にGnRHアンタゴニストを用いている場合に、卵細胞の最終的成熟を引き起こすためにHCGのかわりにGnRHアゴニストが使用する場合があります。HCGとGnRHアゴニストを比べると、受精能のある卵細胞数とその後の胚の分割については、差は見られませんでしたが、妊娠継続の可能性はGnRHアゴニスト使用の場合には有意に低いという報告がありました。(Human Reproduction Update 200 12: pp.159-168より)
[2007年07月01日]
現在少子化対策として、政府与党の小委員会では出産・育児の各段階で出生率を増加するための協議が成されています。
不妊治療においても、これまでも各自治体が体外受精などの特定不妊治療に対して補助するようになってきました。しかし年10万円の支給額の上限と所得制限があります。小委員会では、この上限を年20万円に引き上げ、所得制限を暖めるように協議中です。近い内に決定され、各自治体も受け入れるものと思われます。このように不妊治療に対しても、経済的負担の軽減に向けて、行政においてもさまざまな支援や取り組みが進んでいます。
私共も高度生殖補助医療(ART)の技術面の向上をはかり、妊娠率の上昇のため日々努力を続けています。また不妊治療を通しての心と体の悩みや色々なご心配事に関してもできるだけ御相談に預り、不安が取り除けるようにカウンセリングにも力を入れているところです。
どうぞ御遠慮なく検査や治療に関してばかりでなく、疑問や不安に思われたことは何でも御質問をされて、安心して治療に取り組んで頂きたいと思います。【産婦人科医・麻酔科医:姫野憲雄】
[2006年4月26日]
日本産婦人科学会のガイドラインにより、これまでは、体外受精(IVF)などの高度生殖医療を行う場合には、医師が戸籍でカップルの婚姻関係を確認する必要がありました。しかしながら、事実婚の増加などの社会構造の変化に対応し、2006年4月22日に日本産婦人科学会の会告が改訂され、原則は法律上の夫婦であることという記述は残したものの、戸籍での確認が不要になりました。
事実婚カップルの子供は、「非摘出子」とされ、相続など、様々な面で不利になりますが、ご本人たちが社会通念上の夫婦関係にあると判断されている場合に、体外受精の機会を提供しないのは問題であるとして、今回の改訂となったものです。
[2006年3月17日]
2005年10月8日、日本受精着床学会より、平成9年分実施の生殖補助医療による出生児の生後発育に関する調査報告が実態調査委員会報告として行われました。
調査協力施設は、日本を代表する44施設であり、セントマザー産婦人科医院も協力施設となりました。同報告では、1997年実施のARTによって生まれた609児について、5歳までの成育実実態を調べました。体重と身長の平均値は、生下時、3ヶ月、6ヶ月、1歳、1歳6ヶ月、3歳、5歳の何れの時点においても、男女児、IVF/ICSI児を問わず、2000年厚生労働省乳幼児身体発育調査の身体発育曲線上50%の曲線近傍の値を示した。即ち発育は正常範囲内でした。
出生体重1500g以上、2000g未満の児の身体発育は、成熟児に相応の発育を示しましたが、1500g未満の未熟児については、例数不足のため確実な情報は得られませんでした。精神発達については、運動・生活習慣・言語機能については問題のない発達を示しましたが、探索・社会については若干の遅れを示す児数がIVF児、ICSI児ともにやや多かったので、これらの児においては、親の思い入れの強さが反映している可能性が指摘されました。先天異常の発生頻度は、609例中、25例(3.09%)で、内訳はIVF児31.0%(9/290)、ICSI児3.72%(14//376)、GIFT、その他1.40%(2/143)でした。この発生率は、日本産科婦人科学会生殖内分泌委員会報告にある、同年度の発生率の推定された2.60%〜3.90%の範囲にありました。従って、ARTによって先天異常の発生率が高まることはないことが確認されました。本邦におけるART出生児の中規模長期調査は今回が初めてで、今後の長期調査に生かされるものと期待されています。
[2006年3月7日]
2006年2月18日 日本産婦人科学会理事会で習慣流産の着床前診断が容認されました。当院も申請しております。正式な決定は2006年4月の総会で認められる予定です。
[2005年12月20日]
今回新聞で報道されました45歳で出産された方は、当院へ来院される前に他施設で5回の体外受精を受けておられました。他施設での卵の作り方は、注射とスプレキュアまたは注射とクロミッドでした。卵の数は、1〜3個と少数でした。精子は問題ありません。
当院においては、これまでの治療内容を参考にして、まず漢方を投与して卵の質の向上に努め、その後、採卵となりました。排卵誘発法は、セロフェンのみの投与としました。卵の数は2個と少数でしたが、1個が受精し、採卵後3日目に8細胞を移植し、妊娠に成功、無事出産にいたりました。子宮内膜厚は8.3mmで、黄体ホルモン値は正常でしたので、黄体機能補助は漢方のみを投与しました。採卵までの漢方と移植後の漢方は成分を変えています。
当院では、積極的に漢方の投与をしております。患者様一人一人の証(体質・太っているのか痩せているのか・冷え性かなど)を正確に確認したのちに成分を決めて薬を処方しております。成功したもう1つの理由は、顕微授精(ICSI)の技術だと思います。顕微授精(ICSI)は、現在広く行われている技術となりましたが、精子1匹を卵に入れる技術の差によって、胚の発育には微妙な違いがでてくるものだと思います。技術が高度な場合は、普通の技術に比べ、受精率や4細胞までの発生率に差はありませんが、その後の8細胞〜胚盤胞への発育の過程で、発育のスピードやフラグメンテーションの割合などに差が出てきます。特に高齢の方の卵子の場合には、顕微授精(ICSI)の技術がはっきりと現れてきます。今回の45歳の方の出産は、この顕微授精(ICSI)の技術と漢方薬の効果の結果であろうと考えております。
当院では、体外受精は45歳が、出産されております。基礎体温が二相性で正しく、経膣超音波で卵胞が認められる方は、高齢でも妊娠・出産のチャンスはあります。諦めずに頑張りましょう。
[2005年12月9日]
当院の治療において、未成熟精子(後期精子細胞)を使用した体外受精で生まれた150名の健康状態を調査しました。その結果、健康に問題があった胎児の割合は、自然妊娠と差が認められないことを確認いたしました。
この成果は、2005年11月24日の読売新聞にも取り上げられました。
2005年11月24日 読売新聞より
読売新聞社の著作物について http://www.yomiuri.co.jp/policy/copyright/
[2005年11月4日]
喫煙習慣や煙草の副作用による健康被害は明らかですが、これらは不妊にも多大な影響を与えています。煙草のニコチンやニコチン代謝産物であるコチニンは毒性が強く、その喫煙歴の長さに比例して、着床する胚の能力を有意に低下させ、胚移植あたりの妊娠率を大きく低下させます。喫煙者の主煙流ばかりでなく、副煙流も同程度に胚の質を落とし、着床率は妊娠率を低下させます。 (Human Reproduction Vol.20 No.9 September 2005 pp.2421-2425)
[2005年11月4日]
この10年間に先進国では新生児の男女比が変化しており、男児が産まれる比率が低下しています。これは、環境の悪化による影響とともに、喫煙の影響によるものといわれています。煙草には、遺伝子変異物質や発癌性をもつ30種類の化学物質が含まれ、これらが精子細胞や受精卵に悪影響を及ぼします。特に男性による喫煙では、精子の数や運動性などの形態の変化ばかりでなく、性染色体のY染色体精子に与える悪影響のため、XY精子の比率の変化が起こり、男児が少なくなるものと推定されています。 (Human Reproduction Vol.20 No.9 September 2005 pp.2531-2535)







